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TKC経営支援セミナー24年1月
事務所作成資料 |
当初の平成23年度税制改正(23年1月25日国会提出)とその法案成立過程と復興臨時増税について
第2章 当初の平成23年度税制改正(23年1月25日国会提出)とその法案成立過程と復興臨時増税について
尚、この記事は平成24年1月時点の法令に基づいております。それ以降は法令の追加、改正にご注意願います。
(疑問点は所長にご照会ねがいます。)
1.当初の平成23年度税制改正
(1) 平成23年度税制改正の注目すべき項目は以下の通りでした。
1.法人税率の引下げ 普通法人の税率を 30% から 25.5%へ引き下げ
年800万円以下の部分に適用される軽減税率が18%から15%に
引き下げられる。
2.減価償却制度の縮減 定率法の償却率は定額法の償却率の250%なのですが、これが200%へ引き下げられる
かつての日本の減価償却制度では残存価額を10%、償却可能限度額5%と規定されていた。取得価額からその10%相当額の残存価額を差し引いた金額に耐用年数に応じた
定額法償却率を乗じた額が減価償却費となりました。このような残存価額を設定するのは日本だけでした。アメリカ、ドイツなどは100%償却なわけです。このため、減価償却方法の改正が平成19年4月1日より実施され定額法は取得価額に定額法償却率をかけるそして定率法は定額法の償却率の2.5倍の償却率をもちいる(250%)こととなっていました。今回のA法では定率法の償却率を定額法の200%に引き下げます。少し償却をすくなくすることで増税になります。
3.青色欠損金の繰越控除制度・貸倒引当金制度の見直し
青色欠損金の繰越期間を7年から9年に延長する。
青色欠損金の繰越期間が9年(従前7年)に延長されます。ただしその欠損金が生じた事業年度帳簿書類の保存が必要です。中小法人等以外の法人については青色申告法人の欠損金の繰越控除制度の控除の範囲が繰越控除前の所得金額の80%相当額に制限されます。
このことで中小法人以外の法人は20%部分が課税されることになります。貸倒引当金も使えなくなるわけですから、増税になります。
貸倒引当金について、適用法人を銀行、保険会社その他これらに類する法人及び中小法人等に限定します。なおこれらの法人以外の法人の平成23年度から平成25年度までの間に開始する各事業年度については現行法による損金算入限度額に対して、平成23年度は4分の3、平成24年度は4分の2、平成25年度は4分の1の引当を認める等の経過措置を講じます。
4.雇用促進税制の創設と消費税の改正
従業員を前事業年度末より10%以上かつ中小企業では2人以上増やした場合には
一人あたり20万円の税額控除を認めるもの。ただ、法人の大半が赤字法人の状況ではこの雇用促進税制の効果は疑問符がついています。
消費税の免税事業者の要件の見直しと消費税の仕入税額控除95%ルールの見直し
5.給与所得控除の見直し
①給与所得控除の上限設定
給与が1500万円超えると給与所得控除額が245万円の上限が設けられる。
また、法人役員等の給与収入に係る給与所得控除額は上限が設けられるとともに高額な場合(2000万円超)には徐々に控除額が縮減し、4000万円を超えると控除額は125万円の額になります。
②給与所得者の特定支出控除の見直し
特定支出控除の特定支出の範囲に、職務に直接必要な弁護士などの資格取得費、職務と関連のある図書購入費や職場で着用する衣服の衣服費などの勤務必要経費(1年間で65万円を限度)が追加されます。
6.短期就労役員等の退職金の課税方法の見直し
勤続年数が5年以下の役員には退職金について2分の1課税の廃止をする。
外国資本の日本法人では、本社派遣の日本法人の役員(外国人)の給与を低く抑え、2分の1課税ですむ退職所得(勤続年以下)を多額に払うという節税が行われていたという。
高給官僚が3年から5年で天下り先を移っていく際の退職金も同様なわけです。
7.相続税の非課税基礎控除の引下げ
従前 5000万円+1000万円x 法定相続人数
改正 3000万円+600万円x 法定相続人数
相続税の課税基礎控除の引下げについては、不動産業界の方々において特に関心の強いところです。一度上げた、控除を引き下げるのはなかなか困難なようです。
死亡保険金の非課税
保険金の非課税として 500万円x法定相続人の数 だったのを 500万円x法定相続人(未成年者、障害者、生計一者のみ算入)の数 へ変更するもの
これらの法案は3月11日の東日本大震災の発生による混乱と国会のねじれ状態のため3月末までに成立しなかった。異例の事態となったのであります。
成立したのは4のみで、11月末での継続審査となったA法(積み残し法)は1,2,3,5,6,7の内容と同じものからなっている。
2.3党合意
民自公の3党合意によってやっと成立しました。
民主党、自民党、公明党 3党合意による平成23年度税制改正法案の取り扱い
① 平成23年度税制改正法案(所得税等の一部を改正する法律案)
平成23年1月25日国会提出 この法律案について・・・
① の法律案が2つに分割された
B法(2)現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税等の一部を改正する法律案
(平成23年6月10日国会提出)
平成23年6月30日公布・施行
雇用促進税制は成立したが、その他は租税特別措置法の延長などのみの内容
A法(積み残し法)
(3)経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案中修正
平成23年6月10日修正
当初の改正法案の主な項目( (1)1,2,3,5,6,7)は成立せずに継続審査となった。
(2) B法 現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律
平成23年度税制改正法案(所得税法等の一部を改正する法律案)のうち、次に掲げる改正項目については、別途、新たな法律案として、国税の場合には「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律案」が平成23年6月10日に国会に提出され、同年6月22日可決・成立し、同年6月30日から公布・施行されました。
また、地方税関係も同様となりました。
1. 雇用促進税制等政策税制の拡充
2. 寄附金税制の拡充
3. 納税者利便の向上・課税の適正化(年金所得者の申告不要制度の創設、航空機燃料税の引下げ、罰則の見直し等)
4. その他の改正(証券軽減税率の延長、日本版ISAの導入の延長)
5. 期限切れ租税特別措置の延長
6. 審議中の税制改正法案において法人税率の引下げに伴い廃止・見直しを行うとしている租税特別措置(中小特例含む)について平成24年3月31日まで現行税制を延長
B法はこのように、雇用促進税制関係、寄附金税制の拡充は新しいものですが、それ以外は期限切れ租税特別措置法の延長やその他産業政策のもののみとなったわけです。
(3)A法(積み残し法) 経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案中修正
現在国会で審議中の23年度税制改正法案(所得税法等の一部を改正する法律案)のうち、上記(2)B法以外の次に掲げる改正項目を修正し、国税の場合には「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案中修正」として存置させました。
この法案は(1)のなかの1,2,3,5,6,7などの内容からなっている。
なお、この法案については、今国会中に成案を得られない場合には、閉会中審査手続き(「継続審査」)されます。
(ⅰ)個人所得税、法人課税、資産課税、温暖化対策及び地方税法の改正
個人所得課税、法人課税、資産課税及び温暖化対策税については、復興のための23年度補正予算の検討と併せ、各党間で引き続き検討されます。
また、地方税法案も、国税同様のものについては、同様の扱いとされます。
(ⅱ)国税通則法の改正
国税通則法の改正についても引き続き協議を行い、上記(ⅰ)の改正項目についての協議の際に、更正の請求期間の延長をはじめとする納税環境の整備が成案を得るものとされます。
3.11月の3党合意 その後の税関係協議結果
平成23年10月28日に国会に提出された「経済社会の構造の変化に対応した税制の構造を図るための所得税法等の一部を改正する法律案中修正」(A法(積み残し法))
及び「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法案」は平成23年11月10日において民主党、自民党、及び公明党の3党の政調会長の合意によって修正されました。
○23年度改正事項の取り扱い
「国税:A法(積み残し法)については、法人課税と納税環境整備以外の項目は今改正から削除」
これにより法人税率等の引下げ、減価償却制度の縮減、青色欠損金の繰越控除制度・貸倒引当金の見直しは可決されました。つまりA法(積み残し法)1,2,3は成立しています。
4.まとめ
山本守之 「税制をめぐるモタモタ」より引用いたします。
税制改正が複雑なものとなったので国民には分かりにくい。この原稿を執筆している12月4日現在でいうと次のように区分できる。
① 復興増税(すでに法律は11月30日に成立)
② 平成24年度改正(党税制調査会と政府税制調査会が連日合同会議を開き、12月9日頃大綱へという情報と年内素案で大綱は与野党協議で年明けの情報もある)
③ 「社会保障・税一体改革」(12月23日頃に決定又は年明け)
11月30日に成立した内容は次のようになっている。
(所得税・住民税)
(成立) 認定NPO法人に寄付した場合の優遇
(不成立) 給与所得控除の上限設定、23歳~69歳の成年扶養控除縮減、在職5年以下の者に対する退職給与の2分の1課税の廃止
(相続税・贈与税)
(不成立) 基礎控除引下げ、税率引上げ税優遇ある場合の生前贈与拡大
(法人税)
(成立) 税率5%引き下げ、課税対象拡大、雇用促進制度創設
これらの内容をみると不公平税制の是正が不成立となり、産業政策などが成立している。この傾向は三党合意を中心とする限りは続いていくであろう。
11月29日付の朝日新聞に読者から「復興増税なのに企業は減税」という投書が掲載されていた。
これによると増税期間は所得税が25年、住民税が10年なのに法人税は約40%の事項税率を5%引き下げ、3年間だけ2.4%引き上げるというのは不公平ではないかというものであった。
改正の内容をまとめてみると次のようになる。
1.復興増税
復興増税の内容
税目 内容 見通し
所得税 2013年1月から25年間、税額の2.1%を上乗せ
法案成立
法人税 2012年4月から3年間、税額の10%分を上乗せ
個人住民税 2014年6月から10年間、年1,000円加算
2.2011年の税制改正のうち成立しなかったもの
税目 内容 見通し
所得税 給与所得控除の上限設定 一体改革大綱または2012年度税制改正大綱に明記。2012年の通常国会に法案提出も
相続税 最高税率引き上げや基礎控除縮小
環境税 石油石炭税に上乗せする税
を創設
これらは野党との協議が必要で、実現は不透明
3.抜本改革
税目 内容 見通し
消費税 2010年代半ばまでに段階的に10%に引下げ
一体改革大綱に明記。消費税は2012年の通常国会に法案提出
所得税 最高税率引上げや配偶者控除縮小
消費税は2012年度税制改正大綱には入れるが、法案は2012年3月まで、実施は未定で自民・公明両党は総選挙後としている。
気になるのは、三党合意で法案が成立すると不公平税制となり、企業よりの産業政策が進行することである。
平成23年度税制改正は負担の公平のための事案は不成立(先送り)であり、今後も見通しがないので何のための税制改正が分からない。成立したのは特別措置の日切れ法案や産業政策だけである。
納税環境整備を盛った国税通則法も成立したのは更正の請求期間の延長と更正の際の理由付記だけである。何とかならないものかと気をもんでいるのは私だけだろうか。
平成23年度税制改正法案(当初案)と震災復興財源確保法案の成立状況
成立した事項
[法人税関係]
○法人税率の引下げ
○減価償却制度の見直し
○欠損金の繰越控除制度の見直し
○貸倒引当金の適用対象法人の見直し
○一般寄附金の損金算入限度額の縮小
[個人所得税関係]
○事業所得者等の帳簿記載保存義務の強化
○個人住民税における退職所得の10%税額控除の廃止
[国税通則法関係]
○税務調査手続きの法制化
○更正の請求の期間の延長等
○更正の請求の範囲の拡充
○更正等の処分の場合の理由附記の導入
[震災復興財源確保法関係]
○復興特別法人税(10%上乗せ措置)の創設
○復興特別所得税(2.1%上乗せ措置)の創設
○個人住民税の均等割りの引上げ
未成立の事項
[個人所得税関係]
○給与所得控除額の上限の設定
○特定支出控除制度の拡充
○成年扶養控除制度の縮減
○短期就労役員退職所得の2分の1課税の廃止
[相続税・贈与税関係]
○相続税の基礎控除額の引下げ
○相続税の最高税率の引き上げと税率構造の見直し
○生命保険金の非課税限度額の見直し
○未成年者控除額・障碍者控除額の拡充
○贈与税の税率構造の緩和
○相続時精算課税制度の拡充
[国税通則法関係]
○納税者権利憲章の制定
○税務調査の際の文書による事前通知等
[消費税関係]<>
○地球温暖化対策税の導入
[震災復興財源確保法関係]
○たばこ税の増税
法人税引き下げは平成24年4月1日から始まる事業年度から適用。
減価償却制度の適用は平成24年4月1日以降に取得する減価償却資産から。
法人税率の改正
改正前 改正後
基本税率 軽減税率 基本税率 軽減税率
普通法人 30% 25.5%
中小法人 30% 18%(22%) 25.5% 15%(19%)
(注)復興特別法人税を加味した改正後の実質的な税率は、基本税率適用分について28.05%(=25.5%+25.5%x10%)、
軽減税率のみ適用される場合は、16.5%(=15%+15%x10%)となる。